女嫌いと男性恐怖症
第22話 距離感
遥が目を開けると、目の前には晶の姿があった。
いつも見上げないと、見えないところにある顔が、すぐ目の前にある。
遥が眠るソファにもたれかかって座る晶は、まつげの一本、一本が数えられそうなほど近くにいた。
これは夢かな。
それにしても、やっぱり綺麗な顔。
あっ、こっち見て笑った。
「なんだ。起きたか」
遥を見つめる瞳は優しかった。
振り向いて、頭を優しく撫でる大きな手も。
あれれ。
近づいちゃダメなんじゃなかったっけ?
そっか、夢だからかぁ。
「おい。心の声がだだ漏れだ。寝ぼけると、全部が声に出ちまうのか」
えぇー!
私、何を言ったっけ?
ジッと見つめると、ククッと笑う。
やっぱりおかしい。
優し過ぎる気がする。
「心配しなくても俺はここにいる。
まだ寝た方がいい。」
低い穏やかな、そしていつもより甘い声でささやいた。
頭を撫でる優しいぬくもりに導かれるように、再び眠りの世界へと誘われていった。