女嫌いと男性恐怖症
「ここだ。入れよ」
玄関で、じっとしている遥を招き入れる。
マンションの一室。
2LDKの部屋は一人暮らしには広過ぎるが、同居人はもちろん人を招くことは稀だった。
ましてや女など、一度も足を踏み入れたことはない。
「アキさ、アキはお金持ちなんですか?」
遥は驚いた表情を顔に張り付かせたままで、晶を見上げた。
「お金持ちって。まぁ普通に仕事してりゃ、こんなもんさ。俺ももう32だしな」
遥は、再び目を丸くした。
くりくりとよく動く目が、小動物のようだ。
んっとに、ガキだぜ。
こいつ。マジで23かよ。
「32歳ってことですか。見えないです」
感嘆して感想を漏らす遥を、冷淡に見下ろす。
こいつ俺と普通に会話してるよな。
まぁ俺も、女とこんなに普通に会話するなんて、珍しいどころか初めてかもしれないな。
まぁこいつが、本当に女ならだが。
上から下まで観察しても、女だなんて思えなかった。
別に、確かめる必要もない。
ただのガキだ。
そう思うことにした。