女嫌いと男性恐怖症

 夜。そっと忍び足で歩く影。
 遥だった。

 冗談で言ったつもりだったけれど、どうにもやりきれなくてドアの前まで来ていた。

 それでもドアを開ける勇気はない。
 ジッとドアを見つめた後に、諦めて足を自分の部屋に向けた。

 ドアの開いた音に振り向くと、晶が立っていた。

 ドアを開けて立つ晶は、入り口の上のところに頭がつきそうで、そこに手をかけて遥に声をかけた。

「なんだ。いたずらは諦めたのか?」

 フッと柔らかく笑う晶が、いつもと違った。

「あれ。アキ。眼鏡。目が悪いんでしたっけ?」

 黒縁の、シンプルな眼鏡をかけていた。

「あぁ。いや。これはブルーライト軽減の眼鏡だ。パソコンする時だけな」

「そうなんですね」

 外して見せて、またかけ直した。

 眼鏡をしてから、髪を邪魔そうに後ろにかきあげる姿が自然でスマートだった。

 ドアからの登場から、全てが様になっていた。

「カッコイイ」

 つい口から出た遥の言葉に、晶の口元が緩む。

 可愛いじゃなくて、カッコイイって言って欲しいって、俺もどんだけ小学生のガキなんだ。

 ニヤけそうになる顔を見られないように、部屋に体を入れて「入れよ」と、後ろに声をかけた。

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