女嫌いと男性恐怖症
晶の部屋は、シンプルだった。
ベッドの脇に仕事用らしい書類が並べられた本棚があって、その隣にパソコンが置いてあるだけだった。
そういえば直樹さんが「殺風景な部屋だ」とか言ってたっけ?
そんなことを思い出す。
「服を調べてたんだ。ショプに買いに行くのはまだ無理そうだからな。それでもハルとスーパーに行くたびに、職務質問されてはたまらないだろ?」
パソコンの画面には、男物の服がずらっと並んでいた。
「男はダメでも男の写真とかは大丈夫だったよな。見てみるか?これとかくらいなら、俺も着れると思うんだが」
遥を椅子に座らせ、マウスを操作する晶の顔が近かった。
「これどうだ?」と遥を見た顔は、まつ毛が数えれそうなほどに近かった。
バッと離れた晶は、自身の顔に手を当てた。
「悪い。眼鏡をかけると、距離感が分からなくなるんだ」
決まりが悪そうな声を出すと、また一歩後退りした。
何をやってんだ。
部屋なんて、直樹ですら入れたことないのに。
カッコイイなんて言われて、おかしくなったのか。
冷静になると、すごくまずいことをしている気になる。
「これ。似合いそうですね。でもコッチのが」
気にする様子のない遥に、こんなチビに何を動揺してるんだか。と、馬鹿らしくなった。