女嫌いと男性恐怖症

「アキ。今日はここで、寝ちゃダメですか?」

 頭を鈍器で殴られた気がしたのは、言い過ぎではない。

 なぜだ。
 理由を、簡潔に述べて欲しかった。

 黙ったままの晶に、遥は極めつけのセリフを吐いた。

「直樹さんが好きなんだから、私と一緒に寝るくらいどうってことないですよね?」

 遥は思っていた。

 いつも距離が縮まったと思うと、前よりも距離ができていたりする。

 それは必ず、一緒にいなくなってからだった。
 だったら、離れなければいいんだ。

「ちょっと待て。それとこれとは別だ。ハルは男がダメだ。前のこと忘れたのか? またあんな騒ぎはゴメンだ」

 そうだとも、俺もあんな目を向けられるのはゴメンだ。
 そのせいで、眠れないほどにトラウマなのに。

「だからそれは、アキが直樹さんを好きだから大丈夫です」

 どういう理屈だよ。

「俺の女嫌いは、どうしてくれるんだ」

「アキは私のこと、女だと思って見てるんですか?」

「グッ、愚問だ」
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