女嫌いと男性恐怖症

「アキ?」

「ん?なんだ。」

 潤んだ瞳と目があった。

「寝て起きても、優しくしてくれますか?」

「はぁ〜?」

 理解不能な要望に、思わず呆れた声が出た。
 優しくなんて、そもそもした覚えはない。

「そんな抽象的じゃなく、具体的に言ってくれ。全く理解できない」

 少し考えた後に、遥が口を開いた。
 それは、もっと衝撃的なものだった。

「朝起きたら、ハグしてくれますか?」

 ズリッと椅子の背もたれから、落ちかけた体をなんとか持ちこたえさせると、上擦った声が出る。

「な、なんでだ。ハグって。あ、あれだよな。今までそんな状況」

 いや。あったか。
 記憶から抹消したい。
 もちろんハルの記憶も。

 いやいや。
 あったからといって、理由もなく朝起きてハグする必要はないはずだ。
< 161 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop