女嫌いと男性恐怖症
「アキ?」
「ん?なんだ。」
潤んだ瞳と目があった。
「寝て起きても、優しくしてくれますか?」
「はぁ〜?」
理解不能な要望に、思わず呆れた声が出た。
優しくなんて、そもそもした覚えはない。
「そんな抽象的じゃなく、具体的に言ってくれ。全く理解できない」
少し考えた後に、遥が口を開いた。
それは、もっと衝撃的なものだった。
「朝起きたら、ハグしてくれますか?」
ズリッと椅子の背もたれから、落ちかけた体をなんとか持ちこたえさせると、上擦った声が出る。
「な、なんでだ。ハグって。あ、あれだよな。今までそんな状況」
いや。あったか。
記憶から抹消したい。
もちろんハルの記憶も。
いやいや。
あったからといって、理由もなく朝起きてハグする必要はないはずだ。