女嫌いと男性恐怖症

 明確な結論に達すると、その答えを口にする前に遥が口を開いた。

「私が落ち込んだら、してくれるんですか?」

 こいつ、何を言ってやがる。

 それはともすれば、病気のふりをして愛情を得ようとする精神疾患だ。

 確か、ミュンヒハウゼン症候群。

 アレルギーマーチなんて言葉があったはずだが、精神疾患にもそんな状況があるんだろうか。

「馬鹿なことを言うな。仮病なんて使ってみろ。そうだな。病院に入院させて、図太い注射を毎日」

 アハハハッと笑う遥に、脅し文句は中断された。

「やっぱりアキは、おばあちゃんに似てます。悪いことすると、病院で注射してもらうよ!って」

 フフフッとまだ笑う遥に、またばあさんと同列かよ。と苦笑する。

「ほら。分かったなら寝ろ。ワガママが過ぎるぞ」

 つい頭に手を伸ばすと、その手をつかまれてドキッとする。

「あれが夢じゃなかったらなぁ」

 あれって、あれだよな。

「どんな夢だよ」

「すっごくいい夢です。アキには教えない」

 ふくれた顔の遥に、どこがいい夢なんだか。
 なんとなく、ムスッとする。

「朝のハグを約束してくれたら、ちゃんと自分の部屋で寝ますから」

「絶対だな」

「それは、こっちのセリフです」
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