女嫌いと男性恐怖症

 はぁと盛大なため息をつくと「あぁ」とだけ言って立ち上がる。
 そして寝ている遥の前にかがみこむと、頬をつまんだ。

「こんのクソガキが!」

「イタッイタタッ」

 晶がつまんだ手を離すと、晶の手と交代して痛さを紛らすように、遥が頬をさする。

 ククッといたずらっぽい笑い声を漏らすと、部屋のドアを開けた。

「お帰りはこちらです」

 遥の目に映るドアマンさながらの真似ごとは、悔しいほどにカッコ良かった。

「クッ、クソジジイ」

 悔し紛れにボソッと言い残し、遥は自分の部屋に戻っていった。

 ハッハハッ。何がジジイだ。ガキが。

 そう思いつつ、お腹周りを触る。

「チッ。ランニングでも始めるか」

 晶のつぶやきは、ドアを閉める音とともにかき消された。
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