女嫌いと男性恐怖症
晶は仕事の話が終わると、違う部屋に来ていた。
声が、外に漏れない場所だ。
そこで、持ってきていた仕事用のPHSをポケットから取り出す。
電話帳から「クソババア」を選択した。
辟易した顔を見せないように注意して、遥たちがいる部屋へと戻る。
そこでは、遥の今後について話し合われていた。
「おう。アキ。ちょうど良かった。遥ちゃんがいつまでも家にいるのもなんだから、仕事しないかって」
仕事? 外出もまだ微妙なのに。
困惑の色が顔に出ていたのか、陽菜が口を開いた。
「知り合いの人が働いているところなんだけど、女の人ばかりで。社員の人に男の人はいるけど優しいって。遥ちゃん自身も、働かないと欲しい物を買いづらいと思うし」
遥としては、嬉しい話だった。
いつまでも晶に全て世話になるのも、気が引ける。
確かに、戸惑いがないわけではなかったが。
それでもその話が出た途端に、晶が不機嫌そうなのが気になって、話が半分も頭に入らなかった。
「考えておく」
晶はそれだけ言うと「もう用は済んだ。行くぞ」と遥に告げた。
「あぁ。そうだ。前に頼まれたPHS。届いたぞ。アキと操作は同じだ」
「助かる。サンキュ」
直樹から紙袋を受け取ると、そのまま事務所を後にした。