女嫌いと男性恐怖症

 遥はリビングに入るなり「私も一応は女なんですけど」と、落ち込んだ声を出した。

「だから責任は取らないって、忠告しただろ?」

 ハルは特別だ。

 なんて、死んでも言えないぞ。
 どうすんだ。

 目を合わせたくなくて、そっぽを向いて座る。
 遥も、定位置に座った。

「アキは女嫌いで、生きづらくないですか?」

 昨晩も聞かれたな。
 返事は、しなかったか。

「そうだな。色々と面倒だが、なんとか大丈夫だ」

「私は、ダメです。女に、なりたくなかった。なのに」

 やっぱり体調の変化が、こたえてたか。
 嫌でも、女だと知らしめられるよな。

 それでも男性恐怖症と、自分が女かどうかは関係ないはずだ。
 女になりたくないと、思っていたなんて。

 遥は、つらそうに続けた。

「女じゃなければ、嫌な、思いもしなくて済んだのに」

 嫌な思い。

 それは、いたずらされたという、隣のお兄ちゃんのことを言ってるのだろうか。

 心から追い出していた怒りが、フツフツ湧き上がりそうになるが、遥にそれを見せるわけにはいかなかった。

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