女嫌いと男性恐怖症
「だって。スキンシップは大切だって。ハグとそれに」
「ちょっと待て! それ以上を何か言うなら俺はここを出てく」
遥は急いで自分の口をふさいで、コクコクと頷いた。
こいつ。今、何を言おうとしたんだ。
こんなことどうせ直樹に、吹き込まれたんだろう。
冷ややかな目を向けると、また澄んだ瞳と目があった。
「それが挨拶だからって」
「それは欧米で、ここは日本だ!」
我慢できなくなって立ち上がった晶に、遥が声をかけた。
「どこに行くんですか?」
「どこだっていいだろ」
「ご飯なら私、作ります。もう体調は大丈夫です。イライラして作ると、美味しく作れないって言いますから」
誰のせいだと、思ってるんだ。
晶を置き去りにして、キッチンへ向かう遥の背中を見ながら、心の中で文句を言う。