女嫌いと男性恐怖症

 遥は「互いがダメなものなのに大丈夫」と、いう言葉を噛みしめていた。
 アキにとって、自分は大丈夫なんだと思うと胸が温かくなった。

 事務所にもう寄らないなら。
 と、晶は着替えに行った。

 戻ってきた晶は、黒い細身のジーンズにベージュのコートを着ていた。
 薄手のコートの中からは、白っぽいグレーのパーカーがのぞいている。

「変か?」

 ボーッとしたまま、見つめる遥にしびれを切らして聞いた。
 ボケッとしていた遥は、ハッと意識を戻すと首を振る。

「とっても似合ってます」

 チッ。そう言うだろうと、心構えしていたのに。

 ニヤけそうになる口元を動かさないように、必死になる。

 こんな姿を、直樹に見られでもしたら

「パーカーって。遥ちゃんに寄せ過ぎだろ。お前どんだけ」

 なんて言われそうだ。
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