女嫌いと男性恐怖症

 ブッと前を歩く晶にぶつかった遥は、文句を言おうと顔をあげる。

 しかし「なんで急に止まるんですか!」の言葉が、口から出ることはなかった。

 見上げた先の顔は、驚愕の表情を浮かべて固まっていた。
 そして狼狽したような素振りで、後退りをする。

 苦渋に満ちた顔から「クソババア」と、かすかに聞こえて、遥はハッと晶の先に視線を移した。
 その人も、こちらに気づいたようだった。

「あら。晶ちゃん。あなたがこんなところにいるなんて珍しいわね。それに、可愛らしい子を連れてるのも珍しいわ」

 綺麗な、でも年齢不詳のその人は、話す内容とは裏腹に、凍りつくような冷め切った声を出した。
 女の人なのに怖いと思った遥は、晶の後ろに隠れる。

「こいつは関係ない」

 晶が、苦痛に歪んだ顔で返答した。
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