女嫌いと男性恐怖症

「コブ付きの子に、たぶらかされてるのね。でもまぁいいわ。沙織さんには、今度一緒に旅行に行くように言ってあるから」

「なっ」

 文句を言おうとする晶に、その人は近づいて頬に手をかけた。
 そして撫でるように頬に触ると、フフッと笑った。

 その仕草は怖ろしく、近くで見ていた遥でさえも、ゾッとして晶の袖をぎゅっと握る。

「可愛い晶ちゃん。その声を私に発しないで」

 人をも殺めそうな冷たい声をかけて、フフフッと笑いながら去っていった。

 晶は彼女が去って行った後も、しばらくその場に立ち尽くしていた。
 顔は土気色をして、今にも倒れてしまいそうだった。

「アキ! アキ! 大丈夫ですか?」

 遥の呼びかけにも力なく、「あぁ。悪い。今日はもう帰ってもいいか? 悪い」と、言うだけで動けなさそうだった。

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