女嫌いと男性恐怖症

「あと米かぁ」そう言いながら、キッチンをうろうろする晶を、遥はじっと見ていた。

 声は確かに、男の人そのものだった。

 なのに、全然怖さを感じない。
 どうしてだろう。

 彼は、いくら低い声で男っぽい言葉遣いをしていても、動きや立ち振る舞いは女も男も卓越した美しさがあった。

「米はなかったが、非常食に置いておけって直樹が置いてった、ご飯のレトルトもあったぞ。今日はこれだな。いいか?」

 晶の提案に、遥は首を縦に振った。

 出来上がると、遥にカレーを渡した。

 遥は二人掛けソファーの端に座ったままで、その遥が座っているところから遠い方の一人掛けソファーに晶が座った。

 二人は、しばらく無言のまま食べ進めた。
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