女嫌いと男性恐怖症

 なんとかマンションまで帰ると、遥は晶をソファに座らせた。

 もぬけの殻のような晶に、遥はマグカップを渡した。
 晶は、それを無造作に口につけた。

「これ」

 やっと遥を見た晶に、ホッとしたように答える。

「ホットミルクに、ブランデーを少し入れました。直樹さんが、どうしても眠れなさそうな時に飲ませてやれって」

 直樹のやつ。
 余計なことを。

 そう思いつつも、温かくて体がふわっとするアルコールは、今の晶に優しく溶けていった。

「大丈夫ですか? こんなところで寝ると風邪ひきますよ?」

 記憶の端に、そんな言葉をかけられたような気がする。
 それなのに、温かくてふわふわする心地よい眠りから、目が覚めて起き上がった。

「ウッ」

 隣には小さく丸まった小さいのが、上げられた布団を寒そうに求めてすり寄ってきた。

 そして、目を開ける。

「あれ? アキ。もう朝ですか。まだ眠いです。もう少し。寒いから、もう少し寝てましょう」

 寝ぼけているのか、正気なのか分からない遥が、晶の持ち上げている毛布と布団を引っ張っている。

 いつの間に、布団なんて出したんだ。

 そんなどうでもいいことが、頭を巡った。
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