女嫌いと男性恐怖症

 謝る晶に、遥は少しがっかりした。
 本当に覚えてないんだ、アキは。

「お前は俺の特別なんだ」って言ってたのに。
 あれは本心だったのかな。
 どうなんだろう。

 覚えていない晶に、追及するわけにもいかず遥は聞けずにいた。

 晶も手を出したりしていないか、肝心なところは聞けずにいた。
 こんなクソガキに、そんなことするはずないと思うのだが、それでも酔った勢いなんて怖い言葉もある。

 こんな時に限って直樹の「酔った勢いで、自分の気持ちを言っちまえ」の言葉を思い出す。

 クソッ。
 何もしてないよな?
 何も言ってないよな?

 伺うように、遥を盗み見た。

 盗み見た遥は、苦しそうに顔を歪め始めていた。
 まさか! と、思う間もなく、ハーッハーッと激しい呼吸に変わった。

 急いで紙袋を手に取る。

 クソッ。
 やっぱり、何かやらかしてたか。

 でもそのせいで過呼吸が出るなんて、クソヤローはハルに何をしたんだ。

 半分は八つ当たりの怒りを、過呼吸の元凶であろう、隣のお兄ちゃんとやらにぶつけたかった。

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