女嫌いと男性恐怖症

 晶も、つい聞かないでおこうと思っていたことを口にする。

「一緒に寝て、俺がなんかしたからだろ?」

「え? 何かって。本当に抱き枕みたいにぎゅってして「お前は柔らかくて、甘い匂いがする」って。その後すぐに、寝たみたいですけど。」

 なんでそんな爆弾を、普通のことのように報告するんだ。

 赤くなる顔をどうにかしたかったが、今はそれどころじゃない。

「婚約者なんかじゃない。だいたいあの人は、断るって前に言ったはずだ」

「でもアキのお母さんが、旅行に一緒に行くようにって」

 なんでクソババアの言葉を、鵜呑みにしてるんだ。

 でも、もしかしてそのせいで、過呼吸が出たっていうのか。

 過呼吸。
 精神的なものからきていて、不安定になると出やすい症状らしい。

 そうか。
 こいつはここから、追い出されることに不安を感じたのか。

 居場所が、ないからな。

 依存だとか、共依存だとか、そんなことはもうどうでも良かった。
 どんな理由であろうと、晶は遥を側に置きたいと思っていた。

 晶本人は、気づいていないとしても。

「お前は、俺の母親を知らないからだ。それでも、そうか。悪かった」
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