女嫌いと男性恐怖症

 沈黙の後に、晶が口を開く。

「こっちこいよ」

 え? と、驚く遥に、取って付けた理由を口にする。

「朝は、ハグってやつをするんだろ?」

 クソババアの話をするのに、遥の温もりを感じなければ、自分が不安定になりそうだった。

 アダルトチルドレン。
 よくできた名称だ。
 俺も、大人になりきれていないってわけだ。

 おずおずと晶の側に来た遥の腕を引いて、自分の腕の中におさめた。

 一人掛けソファは二人では狭くて、ほとんど膝に遥が乗っているような状態だったが、そんなこと気にしている余裕はなかった。

「クソババアは、自分の思い通りにならなきゃ気が済まないんだ。ちゃんとババアには断りの電話はしたんだ。でも、そうだな。会うのはこりごりだが、本人に直接言おう」

「本人って、婚約者の方ですか?」

 不安そうな声を出す遥に、フッと笑う。

 婚約者じゃないと言ってるのに、分からないのか。
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