女嫌いと男性恐怖症
第28話 甘えと優しさ
「おいおい。イライラして作ると、美味しいのが作れないんだろ? 俺が作る」
遥は、まだ笑いを止められない晶を、プリプリ怒りながら「じゃお願いします」と、ダイニングの椅子に座った。
晶は、リクエストしても無駄だろうと思いながらも、聞いてみた。
「昨日はずいぶんと、迷惑をかけたようだ。好きなものを作ろう。何が食いたい?」
すると、遥は首を振った。
「迷惑だなんて、思ってません。アキは私みたいに、過呼吸が出るわけじゃないし、ちゃんと大人だから。私にも甘えて欲しいと、思ってました。いつも私ばっかり甘えてます」
晶は思わず、手に持っていた卵を落とした。
「大丈夫ですか?」と心配する遥に、心配するならリクエストに答えて、それ以外の変な発言は控えてくれよ。
と、苦々しく思いながら口を開いた。
「俺は、たぶん普段からハルに甘えてる」
直樹に、ずいぶん前に言われた
「その声と態度で遥ちゃんに接しているなら、甘えてる」の言葉を思い出す。
あぁそうさ、甘えてる。
「俺は女はもちろんそうだが、他人なんてどうでもいいんだ。だから別に、わざわざ自分の感情を見せたりしない。でもハルには、不機嫌にもなるし文句だって言う」
「たまに、拗ねたりしますしね」
遥がフフッと笑った。
楽しそうな遥に、っとにクソガキめ。
と、心の中で悪態をつく。