女嫌いと男性恐怖症
晶は、心配そうな遥を事務所に送ると、待ち合わせのカフェに来ていた。
「晶さん。お待たせしてしまいましたか?」
沙織は息を弾ませて、向かいの席に座る。
一秒たりとも、同じ空気を吸っていたくなかった。すぐに口を開く。
「俺とのことは、無かったことにしてくれないか?」
「え?」
明るかった顔が、固まったのが分かる。
それでも、言わなければ。
「あなたも、俺の母に言われたからだろう? つまらないことに付き合わせて、悪かった」
「そんな。初めは、お義母さまから言われたからですけど」
沈黙が流れた。
何を、どう断ればいいのか。
この人から、付き合いましょうや、何かを言われたわけでもない。
別れようとも、何か違う。
沙織が何かを察したように、口を開いた。
「晶さん、どなたか大切な方が別に?」
大切な。
そうなのかもしれない。