女嫌いと男性恐怖症

 事務所に向かいながら、少し前までの自分を思い出す。

 母親にごちゃごちゃ言われるのも、嫌な気分になるのにもうんざりで、言われるがまま沙織と会っていた。

 もしかしたら、言われるがままに結婚もして、仮面夫婦を装っていたかもしれない。

 そう思うとゾッとするが、それほどまでに何も望んでいなかった。

 でも今は。
 どうしたいのかは分からない。
 ただ今は、早く遥の顔が見たかった。
< 206 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop