女嫌いと男性恐怖症

 遥は部屋でランニングに行くという晶の声を聞いて、少しだけホッとしていた。

 陽菜とのおしゃべり。
 それは楽しいものだった。

 直樹から聞いたという、晶の知らない話なんかも聞けたりして。

 しかし帰り際に聞いた話は、遥を悩ませるものになってしまった。

「晶くん、なんだかんだで人のことを、放っておけない人なんだと思うわ。きっと優しいのね。別に弁護士にならなくたって、彼なら仕事は選べたと思う。でも弁護士になったのって、困った人を放っておけないからだと思うの」

 優しいのは、遥もよく分かっていた。
 でも。

 陽菜の話を聞いて、モヤモヤしてしまった。

 アキは優しい。
 困っていた私を、拾ってくれた。

 でもそれは私じゃなくても、拾ったんじゃないか。

 そんな答えが出ない思いが、消えなくなってしまっていた。
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