女嫌いと男性恐怖症

 晶はランニングから帰ると、シャワーを浴びていた。
 走ってかいた汗とともに、ごちゃごちゃな気持ちを洗い流していた。

 何を、期待していたというのか。
 俺は、女嫌いなんじゃないか。
 ちょうどいい。
 いつもの自分に、戻るだけだ。

 自分でも、心の扉が閉まった音が聞こえたように思えた。
 ガシャンッと、重たい扉が閉まる音だ。

 もしかしたら、開きかけていたかもしれない扉の音。

 そのあとはお互いに何も話さないまま、ただ寒々しい時間だけが過ぎた。

 二人の間にはここに初めて来た頃よりも、ずっと距離ができてしまっていた。
 遥は、晶を見ようともしなかった。
 ただ過ぎていくだけの時間。

 心が近づいてきていただけに、遥の変化は晶にとって絶望にも似たものを感じた。
 去っていく恐怖、もうあんなものを感じたくなかった。
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