女嫌いと男性恐怖症
眠っているのだろうか。
沙織は、目を閉じていた。
病院特有のツンっとした薬のにおいが、鼻を刺激する。
静かな病室に、ピッピッピッという音だけがしていた。
沙織の近くに置かれた、医療器具。
そこから何本もの管が、沙織に繋がっているようだった。
晶は初めて沙織の顔を、きちんと見た。
いつもはにかんだような表情を、上からチラッと見るだけだった顔を。
ゆっくりと目を開けた沙織が、晶を見ると微笑んだ。
「晶さんが来てくださるって、夢じゃなかったのですね」
何も言うことができない晶に代わって、沙織がまた口を開く。
「馬鹿みたいと、お思いですよね。私も驚きました。晶さんに言われたことが、あんなにもショックで」
直樹の電話で言われた、あの人が睡眠薬を大量に飲んで病院に運ばれた。
というフレーズが、かすかに頭の片隅に蘇る。