女嫌いと男性恐怖症
「悪かった。俺のせいだ」
力なく発した言葉に、沙織は首を振った。
「晶さんは来てくださいましたから。それだけで十分です。大切な方は、大丈夫でしょうか」
大切な、方。
そう言われ頭に思い浮かぶのは、自分を避ける遥のよそよそしい顔。
そして、思い出さなくなっていたはずなのに。
今もありありと脳裏に浮かぶ、晶に向けたあの蔑んだ瞳。
失ってしまった。
もう俺に笑顔を向けることも、もう。
気づくと、手がカタカタと震えていた。
その震える手に、そっと沙織の手が重ねられた。
「大丈夫。きっと大丈夫です」
こんな状況なのに俺を労る沙織に、自分は今まで何を見てきたのだろう。
クソババアの息のかかった者というだけで、女以前に毛嫌いしていた。
それなのに、ハッキリした態度も取らないまま。