女嫌いと男性恐怖症
「今からお仕事ですか?」
沙織が、スーツ姿の晶に質問する。
いつもの変わらないスーツだ。
「あぁ」
晶の力ない返事をかき消すように、看護婦が声をかけてきた。
「検査に入りま〜す。面会終了してください」
晶は沙織に軽く手をあげて帰ることを伝えると、病室を後にした。
外に出ると、季節は秋から冬になろうとしていた。
ついこないだまで、赤や黄色の葉をつけていた木々も寒々とした姿で立っている。
その姿はどこか自分のようで、そのことに嘲笑さえする気にもなれず、うつむいて歩を早めた。
晶には景色も全てが、ぼやけて見えるようだった。
全てに、彩りがなくなってしまったように。
ただそのことにさえ気づかないまま、心が麻痺してしまったように何も感じなかった。