女嫌いと男性恐怖症

 沙織の言う通り、沙織はすぐに退院できた。

 そして退院してからは、朝に沙織に会うのが恒例になってきていた。
 カフェで朝ご飯を食べて過ごしてから、仕事に行くことが多くなる。

 えてして晶はほとんど声を発せず、沙織がお喋りして終わることがほとんどだった。

「お仕事は、お忙しいんですか?」

「あぁ」

「お疲れですか?」

「いや」

 こんな具合だ。
 もちろん笑顔はない。

 無表情で感情がない声。
 沙織は晶に気づかれないように、小さなため息をついた。

 沙織を見てもいない晶は、もちろんそれに気づかない。
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