女嫌いと男性恐怖症
女物の服は、何着か陽菜に借りてきていた。
その辺は、どうにかなりそうだ。
「風呂は、男物のシャンプーしかないな」
「あ、それも陽菜さんが心配して下さって、いただきました」
小さなシャンプーボトルを、大きな旅行カバンから出して見せる。
借りてきた服なんかも、ここに入れてきていた。
さすが、直樹の奥さんなだけはある。
今までも気配りがよくできている、と感心することは多々あった。
女だが、認めている数少ない一人だった。
「じゃ風呂に入っちまえ。で、さっさと寝ろ」
「大丈夫です。お風呂は、さっきほど陽菜さんに入れていただきました」
そうだった。
こいつ会った時は、ボロ雑巾みたいだったんだ。
そんな数時間前の出来事が、ずいぶん前の気がする。
「じゃ。寝ろ。部屋はこっちだ」
たまに泊まる直樹のために、ベッドが用意してあった。
その部屋に通すと、シーツをさすがに替えてやった。
「すみません。何から何まで」
「悪いと思うんだったら、その男性恐怖症ってやつを、さっさと治して出て行くんだな」
冷たくそれだけ言って、部屋を出て行った。