女嫌いと男性恐怖症
「お疲れみたいですし、おうちに帰られてますか?マンションの方がゆっくりできるのでしたら、私は晶さんのマンションでも構いませんわ」
マンション。
沙織に言われて思い浮かぶのは、小さい小動物のようなピコピコと部屋を歩いているチビ。
そして、リビングのソファで丸まる小さい……。
「ダメだ。マンションは」
珍しく声を張って発言した晶に、沙織は目を丸くした。
その声は無機質なものではなく、確かに感情がこもった声だった。
それなのにまた無くなってしまった表情で、力なく言葉が転がり落ちた。
「悪い。今日はもう行く」
抜け殻のような晶は、立ち上がると行ってしまった。
もうここ何日、会っていてもそこにいるのかさえ何度も確認しないと不安になるほどに、生気がなかった。
「久しぶりにちゃんと話してくれた言葉が、ダメだなんて」
沙織は寂しそうに、晶の背中を見送るしかなかった。