女嫌いと男性恐怖症

 事務所に行くと「おはよう」と直樹が声をかけた。
 それに返事をすることなく、席に座る。

 日に日に人間味が無くなっていく晶に、直樹は心配そうな視線を送った。

 元通りか。
 いやそれ以下か。

「アキ。遥ちゃん仕事を始めるそうだ」

 ハルが、仕事を。
 そうか始めるのか。

 自分があの小さいのをどうにかしてやらなければ、なんて独りよがりで勝手な思い込みだった。

 俺がいなくたって、大丈夫だ。

「アキ? 聞いてるのか?」

「あぁ。良かったな」

 それだけか。
 まぁ今のアキじゃ、そうかもな。
 でも。

「就職祝いに、何かプレゼントしてやれよ」

 何を、言っているんだ。
 もう俺は。

「もう俺には、そんなことできる立場じゃない」

 立場ってなんだよ。
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