女嫌いと男性恐怖症
「おいアキ。お前は何もしないのか」
静かな、しかし問い詰めるような言い方にも、晶は無表情のままだ。
「何がだ」
「お前は、自分の生い立ちが不幸だ。トラウマがある。女嫌いだ。そう言って全てを避けて、逃げて、負けて生きて行くのか。」
見る見る顔色が変わる晶が、拳を握りしめた。
「何を何を言ってやがる! お前に、直樹に俺の気持ちが分かってたまるか!」
思わず胸ぐらにつかみかかって睨んだ直樹の顔は、発した言葉とは裏腹に晶を心配する悲しそうな顔だった。
「悪いが、お前の気持ちは分からない。それでも遥ちゃんは、男性恐怖症をどうにかしようと頑張っているのは、俺でも分かる。それなのに、お前はどうなんだ」
俺。俺が、か。
「女嫌いにあぐらをかいて、何もしてないんじゃないのか?遥ちゃんに対しても、あの人に対しても」
晶は直樹をつかんだ手を離すと、崩れ落ちるように椅子に座った。