女嫌いと男性恐怖症

 晶はここ何日か泊まっている、ビジネスホテルに来ていた。
 部屋に入ると、ベッドに横になる。

 俺は……。

 遥のために読んだ本。
 そこで知った名称に反発や憤りを感じながらも、自分が長年苦しんだものはこれだったのだと、安堵する気持ちにもなった。

 機能不全家族。
 アダルトチルドレン。
 毒親。

 そして、女嫌い。

 それらの納得する症状に自分を当てはめて、だからなんだ。そう思ったのは確かだった。

 それを、言い訳にしていたのだろうか。

 晶は思い出さないように努めていた、遥のことを思い出す。

 怯えながらも直樹に会い、少しずつ話せるようになったこと。
 晶が誘ったからといって、外出までしたこと。

 直樹が言うように遥が頑張っていた姿とともに、晶に向けられた笑顔が浮かぶ。
 懐いた小動物の笑顔。

 なぜ、あの笑顔を忘れてしまってたんだろう。
 いつだってハルは、笑顔を向けてくれていた。

 それなのにどれだけ小さなことで、俺はハルが離れて行ってしまったと思ったんだ。
 そう勝手に、思っていただけなんじゃないのか。

 自分が傷つくのが、怖いだけで。

 こんな簡単な答えを、直樹に喝を入れられないと気づけないとは、どこまでバカなんだよ。

 晶は、ふいに急激な睡魔に襲われた。

 あぁここ数日、まともに寝てなかったな。
 突然の睡魔にあらがうこともせずに、目を閉じた。

 目には知らぬ間に、涙が滲んでいた。

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