女嫌いと男性恐怖症
沙織は、父親に電話をかけていた。
「お父様。私、晶さんとは、もうお会いしません」
「おぉ。そうか」
電話口からは、安堵したような心配しているような、複雑な心境であろう父親の気持ちが垣間見える。
「それで、お願いがあるんです。勉強したいので大学に行かせてください」
「な、なんだって? 沙織、どうしたんだ? 沙織?」
沙織は、可愛い娘に何不自由なく育ててくれた父親に感謝していたし、幸せになれるように素敵な人を許嫁にしてくれたことも感謝している。
全てに感謝していた。でも。
「どうしても、叶えたい夢ができたんです。詳しいことは、おうちに帰ってから相談に乗ってくださいね」
「あ、あぁ」
戸惑っている父親との電話を切ると、沙織は真っ直ぐ前を見て歩き出した。