女嫌いと男性恐怖症
沙織は、いつ会っても凛としていた美しい晶を思い出す。
常に立ち振る舞いが綺麗で、無駄がなかった。
そんな晶が穏やかになり、そして今は壊れかけている。
あの病室で震えた手。
助けたいと思った。
でも、それは自分ではなかった。
そんな壊れてしまいそうな人を、助けられる人になりたい。
ここ何日間で強く思うようになり、それは揺るぎない目標となった。
「夢を叶えられたら、晶さんの隣に大切な方がいらっしゃっても、笑顔で祝福できますよね」
そうつぶやくと、悲しそうに微笑んだ。
今はまだ。
晶さんは、何もお互い知らないとおっしゃられたけど。
私は口数が少なくても、当然のように車道側を歩いてくれる晶さんの優しさを知っていましたよ。
涙が出そうになる瞳を閉じる。
「大丈夫、大丈夫」
沙織は、また前を向いて歩き出した。