女嫌いと男性恐怖症
第32話 扉の向こう
晶は、マンションの扉に手をかけた。
その扉は、心の扉に似ているように思えた。
滅多に、他人を入れなかった扉の中。
入れたのは、直樹と。
扉を開けると、玄関に小さい何かがあることに気づく。
それは歩いて、少しよれた小さなスニーカーだった。
何かにぶつかりながら靴を脱ぐのさえもどかしく、急いで脱ぐとリビングのドアを開けた。
そこには小さいのがいて、二人掛けのソファの端。
音に気づいて振り向いた顔。
「ハル」
どうして。
何をどう声をかけていいか分からないでいる晶に、遥が口を開いた。
「おかえりなさい」
涙が溢れそうになる。
変わらない声。
変わらない。