女嫌いと男性恐怖症

「遥ちゃんさすがだ。その認識は間違ってない。説明する手間が省けたよ」

 クククッと、まだ笑っている。
 笑いを抑えられないまま、続きを話す。

「つまりあいつは、図体はデカイがガキなんだ。だからきっと遥ちゃんが男性恐怖症でも、大丈夫だったんだね」

 そうなのかな?
 違う理由の気もするけど。

 そんな思いの遥を知ってか知らずか、直樹はまた前と同じ嘘をつく。

「アキはあの人に、世間を欺くために会っていたことがバレちゃってね」

「あの人って、婚約者の方ですか?」

「婚約って、そこまでじゃなくて曖昧なものだと思うけどね。婚約破棄となると、慰謝料とか色々と問題が出てくる」

 珍しく弁護士らしいことを口にした直樹は、ニッと笑った。

「まぁともかく、こっぴどく振られたんだ。慰めたりすれば、余計にひねくれるだけさ。遥ちゃんなら、分かるだろ?」

 またクククッと、笑っている。

 つまり簡単に言えば、弱っている晶の側にいてやってくれないか? と、言いたいのだろう。
 しかも慰めたりせずに。

 でも。遥は釈然としていなかった。

 優しい晶は、誰でも助けるのではないか。
 その答えが出ていなかった。

 それでも晶が必要としているならと、マンションに帰ることにしたのだった。
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