女嫌いと男性恐怖症
第33話 ハンバーグ

 晶は仕事を切り上げて、早めに帰ることにした。
 直樹はニヤニヤしていたが、それに対しては冷たい視線を向けておいた。

 食材を買い終えると、マンションに帰る。

 しーんとした部屋は、まだ遥が帰っていないようだった。
 それなのに。

 遥が出ていってから、ここにいられなかった。
 誰もいない部屋は、世界で自分が一人だけだと言われている気がした。

 なんて大袈裟なんだと、鼻で笑う。
 今なら鼻で笑える。

 その時と同じ、しーんとした部屋。

 それなのに、今は遥が帰ってくる。
 それだけで、ここにいたいと思う。

 やっぱり俺は、どうかしちまったらしい。
 あのチビでクソガキのハルが、一番大切らしい。

 それでも、やっぱりクソガキは、クソガキだ。
< 237 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop