女嫌いと男性恐怖症
少しだけ和やかになった食事に満足をしながら、晶は洗い物をしていた。
ハンバーグが良かったかどうかは聞けなかったが、まぁ今日のところは。
遥は、テーブルから食べ終わった皿をキッチンへ運んでいる。
トットットッと歩くそれは、改めて見ても小動物だった。
「わざわざこっちまで持ってこなくても、カウンターに置いてくれたらいい」
キッチンまで回り込んで持ってくる遥に、泡のついた手のまま声をかけた。
「いえ、あの。ハンバーグ美味しかったです」
うつむいている遥の、表情は見えない。
「え、あぁ。良かった」
突然の褒め言葉に、声を詰まらせる。
遥はトットットッと、リビングの方へ行ってしまった。
なっ、どうしたんだ。いきなり。
いや待て。
美味しかったです、は礼儀だ。そうだ。
意味の分からないことが頭を巡るのに、顔が熱くなる。
「うわぁ、やばっ」と、つぶやきながらしゃがみこんで、思わず髪をかきあげた。