女嫌いと男性恐怖症
第35話 ターコイズ
朝。仕事に行く準備をしていると、遥に声をかけられた。
「アキどこに行くんですか?」
「どこって仕事」
「今日は土曜ですけど、そんなに忙しいんですか?」
遥の言葉に絶句する。
土曜、だったのか。
曜日が分からなくなるほどに、参っていたとは。
遥に目をやると、微笑んでこちらを見ていた。
でも、そのおかげで大切なものが何かに気付けた。
晶はフッと笑みを浮かべると、ネクタイを緩めた。
「じゃ今日はどこかへ行こう。そういえば仕事始めたんだよな。就職祝いに、なんか買うか?」
別に、直樹に言われたからじゃない。
たまたまだ。
そう自分に言い訳をしていると、遥の目がキラキラしている。
久しぶりに見る、ロボットの遥に目を細めた。
お宝を見つけたみたいだ。
「いいんですか? 欲しいです! お出かけするんですよね? 着替えて来ます!」
嬉しそうな遥に、ハハッ、物で釣るとかどんだけ。と、自分の言動を嘲笑した。
晶も、一着しかない私服に着替え直す。
「服、買いに行かないといけませんね」と、言う遥に「それはまた今度だ」と断った。
せっかく、穏やかな日常が戻ったんだ。
また過呼吸とか出るようなことは、したくなった。