女嫌いと男性恐怖症

「あれは」

 遥が控えめに指差した先には、宝石の名前となにやら書かれたプレートが置いてあった。

 膨れていても、見ているものは見ているんだな。
 お宝ロボットは、性能がいいらしい。

 心の中に浮かぶ遥へのからかいの言葉に、一人楽しくなって顔がにやけてしまいそうだった。

 店員は、遥に向かって説明していた。

「こちらは誕生石です。どの石がどんなパワーや言い伝えがあるのかを、書かせていただいております」

 1月から順に「ガーネット:真実・勇気・情熱」などと書かれてある。
 順番に見ていた、遥の足が止まる。

 視線の先には、水色に少し緑が混ざったような綺麗な石が、指輪の側面に数個並んではめられていた。

 その指輪の石は12月の誕生石のようだ。「ターコイズ:魔除け・目標達成・友情」それは晶からしたら、今の遥に必要なものばかりだった。

「きれい」

 つぶやいて釘付けになっている遥に、店員がにこやかに説明する。

「ダイヤも入ったデザインですので、彼からの贈り物でもピッタリです」

 ダイヤは4月の誕生石だった。
 そのプレートには、永遠の愛と書かれてあった。

 複雑な顔をした遥はうつむくと、小さくつぶやいた。

「やめときます」

 ったく。
 面倒なのは相変わらずだな。
 晶は遥の頭をグリグリした。

「自分が気に入ったなら、それでいい。石の意味なんて迷信みたいなもんだ。信じるにしても、ターコイズの方を信じたらいい。魔除けとか、今必要なものだろ」

 男避けと魔除けって、意味は一緒なのかな?

 適当な晶の助言に苦笑すると、心が軽くなった気がした。

< 254 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop