女嫌いと男性恐怖症

「いらっしゃい。あら。晶くんがスーツじゃないなんて初めて」

 陽菜まで驚いた声を出す。

 針のむしろのような視線に、この場から立ち去りたくてジリジリした。
 遥は隣で、嬉しそうにはしゃいでいる。

 チッ。人の気も知らないで。

 晶は、こちらも楽しそうに肩に手をかけてきた、直樹の腕を振り払う。

「なんだよ。つめてーな」

 最高に面白い。傑作だ。
 の声が聞こえてきそうな顔を一瞥して、荷物をキッチンへ運んだ。

「ありがとう。助かるわ」

「いや。こっちも急で悪かった」

 建前を口から吐き出すと、リビングのソファにかけた。

 遥は陽菜と一緒に、お昼ご飯の準備をするようだ。
 二人で食材を冷蔵庫にしまいながら、楽しそうに話している。

 その姿を見て、まぁ来ても良かったか。と、思うことにした。

< 258 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop