女嫌いと男性恐怖症
直樹がグラスを持って、隣に座った。
「何も言うなよ。自分でも分かってる」
先手を打って直樹に牽制すると、クククッと笑った。
「よく似合ってる」
そう言った後もクククッと笑う直樹に、思ってもないクセによ。と、冷めた視線を送った。
「それにしても良かった。もう家に遊びになんて来れないんじゃないかと、思った時もあったぞ」
軽口をたたくように言う直樹に、フッと息を吐く。
つい2、3日前のことなのに、その日々は世界の終わりのようだった。
ただ、遥が側にいなかっただけで。
直樹は、じっと黙ってしまった晶の背中をたたいた。
「しけた顔すんなよ。俺まで思い出すだろ。毎日しけた面を見せられてた、俺の身にもなってくれよ」
わざと大袈裟におどける直樹に、力なく笑う。
「ハハ。悪かった。あの時は、助かった。本当に」