女嫌いと男性恐怖症

「お皿、空になってるわね」

 昼からダラダラと飲み始めて、いつの間にか夕方だった。

「何か持って来よう。冷蔵庫開けて構わないか?」

「えぇ」

 立ち上がった陽菜は、晶と一緒にキッチンへ向かった。
 そして少しすると、陽菜だけが戻ってきた。

「晶くんが、カルパッチョ作ってくれるって。お魚も捌けるのね。晶くんって、かっこいいわね」

 陽菜の発言に、直樹はフッと笑みをこぼした。

「今さらアキに惚れるなよ」

 苦笑する陽菜は、直樹をたたく。

「そんなんじゃないわよ。でも、表情もすごく柔らかくなったわ。それに普通に接してくれてる」

 それは遥も感じていた。

 いつか見た時の晶は、陽菜の存在を無視しているのかと思える接し方だった。
 今は、遥や直樹と話す時と変わらない。

「それは遥ちゃんのおかげだろ? なぁ遥ちゃん」

 私は何もしてない。
 返事ができなくて、遥はうつむいた。

 そこへ、戻ってきた晶はお皿を持っていた。
 お皿には、彩り鮮やかなカルパッチョが並べられていた。

「わぁ美味しそう!」
「ここまでやれると、逆に嫌味だ」
「まぁそう褒めるな」
「おいアキ。俺は褒めてないぞ」

 そんな楽しそうな会話が、遥にはどこか遠い世界のことのように思えた。
 まるでテレビの画面を見ているような、自分とは関係のない遠い世界。
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