女嫌いと男性恐怖症

 みんなが食べ始めても、遥はぼんやりしていた。
 晴れない表情の遥を見て、陽菜が直樹に向かって口を開く。

「せっかく美味しいのに、飲み物が足りないんじゃない? 買って来てくれないかしら」

「えー。もういいだろ?」と、不満顔の直樹に、遥が立ち上がった。

「私が行ってきます。何がいいですか?」

 まだ沈んだ顔をしている遥は、このままどこかへ行ってしまいたいとさえ思っていた。

「バカ。ガキが夜に出歩くな」

 ガキ。その単語は気持ちが沈んでいても、聞き捨てならなかった。
 度重なる人前での子ども扱いに、カチンとしている遥にさらに付け加える。

「だいたいお前じゃ酒を売ってもらえねーんだよ。直樹、行くぞ」

「なんでだよ〜」と、まだ不満そうな直樹を引きずるように二人は出て行った。

「フフッ。晶くん。優しいわね」

「あれのどこがですか?」

 ぷーっとむくれている遥を見て、陽菜は微笑む。

 だって今の一言で、すっかり遥ちゃん元気になったじゃない。
 陽菜は、口には出さずに目を細めた。
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