女嫌いと男性恐怖症

「だから、直樹に言いたくないんだ」

 ムスッとする晶の肩に、直樹が腕を回す。

 デカイ図体が、心なしか小さく見えるその肩に。

「ハハハッ。天下のアキでも遥ちゃんには敵わないな。それでも、本当の気持ちは伝えた方がいいんじゃないのか?」

 本当の気持ち。
 胸がギュとつかまれる思いがする。

「今の関係が、壊れるのが怖いんだ。笑っちまうだろ? 俺はこのままがいい」

 本心なのかねぇ。
 好きな女と一つ屋根の下。

 このままで、ずっといられるものなのか。
 不憫なやつ。

「男はどうして、女に装飾品を贈りたくなるんだろうな。やっぱり俺の物っていう印を、つけておきたいんだろうな」

 俺の物……。

 そう思いたいのに、すくった指の間から砂が溢れ落ちるように、遥との関係は不確かな物の気がした。

「まだ男性恐怖症が心配だからな。指輪は男避けだ。深い意味はない」

 男避けって、そのままだろ。

 遥ちゃんのためじゃなく、アキが遥ちゃんに悪い虫がついて欲しくないだけ。
 それに気づいてないのか、アキは。

 盛大に愉快だったが、ものすごく可哀想な奴にも思えた。

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