女嫌いと男性恐怖症

 遥と二人になった陽菜は、少し元気になった遥に問いかける。

「遥ちゃんは、私と晶くんが仲良くしてると心配?」

 目を丸くしてうつむいた遥に、陽菜は優しく続ける。

「普通のことよ。大切なのね。晶くんのこと」

 大切、そう大切。
 でもそうじゃなくて。

「陽菜さんと私への、アキの態度が違い過ぎて」

 しょんぼりする遥に、本当に可愛いんだから。と、陽菜は苦笑した。

「それは遥ちゃんが、晶くんにとって大切だからよ」

 アキにとって大切。
 確かにそう言ってくれた。でも…。

「陽菜さんには、ちゃんと女性として接しています。いたわっているのも分かりますし。でも私には、いつだって子ども扱いだから」

 それを、ヤキモチって言うのよ。

 そう言いたいけれど、言ってしまっていいのか陽菜は悩んでいた。
 ゆっくり育んで行かないと、壊れてしまいそうな繊細な関係の気がして、前回の嫌な記憶も蘇る。

「晶くんにとっては、遥ちゃんは特別なのよ」

 特別。
 大切でクソガキで、小動物のロボットだって言われた。

 そのことに、安心したはずなのに。

 女として見られて困るのは、自分のはず。
 それなのに、女性として接せられている陽菜がうらやましくさえ思った。

 また分からなくなった自分の気持ちに、不安になる。
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