女嫌いと男性恐怖症
「アキ酔ってますか?」
心を読んだような質問に、晶はムキになる。
「酔ってねー」
「酔ってます」
「酔ってねーって、言ってんだろ?」
「まだ言うか!」と遥の頬をつまむ。
「んー!」と遥は不満げな声を出した。
「冷たっ。お前、薄着過ぎるんだよ。だいたい肉が足りてないんだ。ったく」
頬をつまんだ時のむくれた顔に満足して、自分のコートの左側に遥を入れる。
「な、なんですか? これ。歩きにくいです」
「バカ。離れるなよ。寒いだろ。もっとくっつけよ。足を合わせれば歩けるだろ」
晶の左側がひんやりする。
ったく、こんなになるまで、何も言わないのかよ。
「歩きにくいですってば! アキとコンパスが違うの分かってます?」
「大丈夫だ。そんなのこっちが合わせてやる。二人三脚を知ってるだろ? それと同じだ」
やっぱりアキ酔ってる。
こんなの変だ。
そう思うのに遥の右側は暖かくて、離れたくない気持ちだった。