女嫌いと男性恐怖症

 まずい。可愛くて。
 たがが外れちまいそうだ。

「ダメですか?」

 可愛い顔を見ていられなくなった晶は、遥を抱き寄せる。

「1回しか言わないって言っただろ?」

「でも」

 自分の胸の中で、くぐもって聞こえる遥の声が愛おしい。
 ぎゅっと抱きしめるとささやいた。

「ハル、遥は俺にとって大切だ。クソガキで小動物でロボットだが、そんなハルが。遥が好きだ」

 最後は消えてしまいそうな声。
 自分の言った言葉に、胸が苦しくなる。

 晶は優しく遥の頭を撫でると、自分の胸の辺りにある遥の顔に自分の顔を近づけた。

 そしてそっと遥の首すじに、唇を触れさせた。
 温かい吐息がかかる。

 まずい。ここままじゃ。

 自分の気持ちと葛藤して黙る晶に、遥の声が聞こえた。

「やっぱり寝ちゃった。酔っ払ってるんだから」

 寝た、ことにした方がいいのか。

 また違う葛藤をする晶の腕の中から、遥が離れる。

 ダメだ。行くな。

 そう抱きしめ直そうとした時、頬に柔らかい何かが触れた。

 え。なっ。

 固まる晶が気づいた時には、遥の姿は無かった。
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