女嫌いと男性恐怖症
「大人ってずるいです。」
朝、起きると既に起きていた遥が、朝食を作っている。
晶は眠い体を引きずって、ダイニングにいた。
遥の、自分が大人ではないと完全に認めたような言い方に、ハハッと笑う。
「何がだ」
「酔ったってことで、都合の悪いことは無かったことにして」
こいつ昨日のことを言ってるのか。
「別に、無かったことになんてしてない」
「でも」
昨日のあれはなんだったんだろう。
かすれて消えかけた「スキダ」の声。
あれは私が「ガキ」を「好き」に変換したわけじゃない。
「スキダ」それは「好きだ」ってことだよね?
その「好き」ってどういう。
どうせ覚えてないくせに。
そう思うのに、遥を見つめる晶の視線は優しくて「覚えてるんですか? どういう意味なんですか?」と、聞きたくなる。
「今日はどうするんだ。俺は別に酒が残ってるわけでもない。食材の買い物は行かないと、ハルも平日は忙しいだろ?」
いつも通りの晶に、やっぱり覚えてないんだと思うことにした。